昭和館の新たなチャレンジ

昭和館は、岐阜県高山市と大分県由布市の2拠点で、コロナの前には年間約11万人のご来場を頂いておりました。

お客様は従来の昭和世代の方々に加え、外国人旅行者の割合が増え、平成以降に生まれた若い方々が、物珍しさやSNSへの投稿を目的としてご来場されることも少なくありませんでした。

新しいお客様をお迎えし、日々現場で奮闘していた矢先、コロナで創業以来、はじめて休業を経験。正直、当初は先々の不安で思い悩むこともありましたが、その中で私たちはあらためて「昭和館とは?」という事業の根本を考え、今こそ昭和館自体のあり方を見直す時だと思うに至りました。

そしてコロナによって暗く、元気を失っている街や人たちに対し、昭和館ができることは何かを考えました。

まず、現状を否定し、昭和館は、ひと昔前のように昭和時代のノスタルジーに浸るだけの場所ではダメだという認識を持つことから始めました。

従来の
①物を大切にする昭和時代の精神を後世に遺すこと。
②温故知新(過去を学び、その知見を活かして新しい知識を得る)の施設づくり
の基本方針を変えることはありませんが、新しい時代の新しい世代に大事なことを伝えていくミッションを新たに設定しなければならないと思いました。

結論は2つ。
1つは、昭和館事業を通して、昭和初期の様々な苦難を乗り切った人々のあふれ出すパッションとみなぎるパワーを若い世代に伝え、元気になって頂くこと。
2つ目は昭和時代の成長を支えた人々の土台となる生活や文化を通して心の豊かさがいかに大事かを面白おかしく伝え、希望に満ちた気持ちで帰って頂くこと。
これを新たなミッションに設定し、昭和館は新しい価値を伝えていきます。

また、昭和を知らない世代の皆様に向け、SNSや動画による情報発信の他、館内のコンテンツについてもテクノロジーを一部導入し、昭和と令和の時代を融合させた面白いものを次々に導入していきますので、ぜひ楽しみにして頂ければ幸いです。


昭和館の価値

昭和とはそもそもどんな時代だったか?
日本が戦争の焼け野原から立ち上がり、たった数年で世界有数の経済大国と呼ばれるようになった時代。

スマホもPCもSNSもない。なんでも手作り、手書き、手作業でしたが、だからこそ一つ一つの物には血が通っているかのような温かみがあり、そして物心の豊かさを自分たちの手で作っていこうとする時代でもありました。

昭和の物品は、今の時代の人たちからすると機能的には古臭いガラクタだと思うかもしれません。
しかし、それをよく見て、そして触って欲しいのです。例えばずっしりしたカメラの重みや手書きで刻まれた製造メーカーのロゴ。
そこには物理的に見えている物の面白さだけでなく、昭和の町並みの中でそれらを手に取った瞬間に当時のシーンやそこに居た人たちの声をイメージすることができて、本当にエモいです。

昭和のヒーローや映画もしかり。表面的に見れば手作り感やぎこちなさがあって、コンテンツとして見たら今の演出技術とは比較になりません。
しかし、よく見ると当時、ヒーローに夢中になっていた子供たちの純粋な思いに応えようとする製作に関わる人たちの想いが至るところに滲み出ていて、見れば見るほど微笑ましく、なんだかほっこりするのです(制作者の思いは今も昔も変わらないところだと思いますが)。

上記はほんの一例です。
施設の中は、時代を象徴するような物品が散りばめられ、実際の昭和時代の資材を使って街並みを再現し、音も匂いも本物だけを集めて空気感を作っています。
昭和館を訪れた皆さまにも五感で面白さを感じて頂けることはあろうかと思います。


最後に

昭和館は、今は亡き五味館長が「古き良き昭和の時代を後世に残したい。消費が美徳とされ、捨てられようとしていた品々を集めて展示し、皆様に見ていただくことによって、昭和を振り返ると共に21世紀の社会がどうあるべきかを考える原点になってくれればいい」という思いでスタートした事業です。

最近になってようやくSDGsのコンセプトの一つにある「持続可能な消費と生産パターンを確保する」という発想が少しずつ世に広まってきました。
「ECO=COOL」という価値観の変化は、私たちの創業の理念に沿うものであり、非常に喜ばしく思っていますが、まだまだ充分とは言えません。

「昭和館で、映える写真や動画を撮りたい」というお楽しみ方で大いに結構。
ぜひ、肩肘張らずに見にきて頂ければ幸いです。
どんな形であれ、この想いが世界に発信され、共感され、少しでも行動してくれる人が1人でも増えることを私たちは願っています。